俺と初めての恋愛をしよう
「わたしなんかとはなんだ。自分を卑下するな。こんなに素晴らしい人はいない。いいか、今後一切それを言うのは禁止だ!」
「そうですね、そうします」

後藤はそう言いながらも、嬉しさでいっぱいだった。
今日子がこのままでいると決心した。そのことがやはり嬉しい。

「今日は何をしていたんだ?」
「生活に必要な食器などをそろえました」
「そうか」
「部長」

今日子は今更ながらにふと気が付いた。
後藤に抱きしめられていた腕を解き、見る。

「会社はどうしたんですか? まさか、早退?」
「……まあ、そんなところだ」

今日子が呆れたのは言うまでもない。
今日子のこととなると見境がつかなくなる。
職場での後藤の仕事ぶりを知っているだけに、新たな発見でいいが、頻繁にそんなことをすると、後藤の身が心配になる。
バツの悪そうな顔をした後藤が、年上だが、かわいく見えた今日子だ。
つきものが取れたような今日子は、美しさに磨きがかかっていた。
今までのように、空気のような存在でありたいと願っていた時と変わらない過ごし方をしているのだが、放たれるオーラが断然違うものになっていた。
毎日ヤキモキしているのは後藤だが、今日子を輝かせたのは自分でもある。嬉しいような、嬉しくないような複雑な気分だ。
後藤は、今日子に恥ずかしくないようにと、今まで以上に仕事をこなした。
効率よく部下に仕事を振り分け、自分が率先して前に出た。バイタリティーあふれる仕事ぶりに、周りの評価もさらに上がっていた。


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