俺と初めての恋愛をしよう
後藤にもたれていた今日子は、その意味深な言葉に、姿勢を直して、後藤を見た。
後藤の顔はにやりとして、いたずらっ子のような顔をしていた。
「なに? 何か知っているの?」
「俺が異動させないように人事に言った」
してやったりといった顔を後藤はしていた。
今日子は理解が出来ず、目をぱちくりとしているだけだ。
「海外赴任の話が出た時、行きたくないと断った。もちろんキャリアに繋がることだ、男としては申し分ないことだったが、間髪入れずに断った」
「ど、どうして……」
「お前と離れたくなかったからだ」
「は!?」
今日子は自分でも驚くくらいの声が出た。誰の声だかわからないような声だった。
「当時の部長、今の常務だが、さすがに断らないと思ったのだろう、びっくりしていたさ。でもその当時の俺には迷いはなかった。海外赴任しなくても昇りつめてやると思っていたし、出来る自信があった」
確かに後藤の実力なら間違いないだろうが、申し出を断るなど、一、社員が出来ることなのだろうか。
「考えるようにと言われたが、俺の考えは変わらない。何度も説得された時、条件を出した」
「条件?」
「林 今日子を異動させないことだ」
「……!!」
まさか、自分の移動が、後藤によって操られていたとは思いもしなかった。びっくりしすぎて声も出ない。
「その理由を話して、赴任の話は決着した。俺の交渉勝ちだ」
はははっ、と高らかに笑う後藤は、自分が何をしたのか分かっているのだろうか。人間一人の時間を左右したのだ。しかし、悪びれた感じは全くない。
「そんなことが……組織の中であり得ません」
「あり得ただろう? 異動がなかったんだから」
「じょ、常務は、あの、私たちのことは」
「会社で唯一知っている人物だな。帰国して真っ先に報告したよ。意中の女は仕留めましたってね」
「何も知らないわ」
「だって、今初めて話したことだ。知らなくて当然だ……ただ、退職をしないかだけが不安だった。異動は止められても、退職までは止められない。だから植草に報告させた」
ふざけた様子で話す後藤も、真剣な顔になった。
「イギリスにいても不安で仕方がなかった。もし退職の報告があったら、帰国して連れ帰ろうと思っていた」
「俊介さん」
「でも、君は変わらずここにいた……そして今がある」
後藤の顔はにやりとして、いたずらっ子のような顔をしていた。
「なに? 何か知っているの?」
「俺が異動させないように人事に言った」
してやったりといった顔を後藤はしていた。
今日子は理解が出来ず、目をぱちくりとしているだけだ。
「海外赴任の話が出た時、行きたくないと断った。もちろんキャリアに繋がることだ、男としては申し分ないことだったが、間髪入れずに断った」
「ど、どうして……」
「お前と離れたくなかったからだ」
「は!?」
今日子は自分でも驚くくらいの声が出た。誰の声だかわからないような声だった。
「当時の部長、今の常務だが、さすがに断らないと思ったのだろう、びっくりしていたさ。でもその当時の俺には迷いはなかった。海外赴任しなくても昇りつめてやると思っていたし、出来る自信があった」
確かに後藤の実力なら間違いないだろうが、申し出を断るなど、一、社員が出来ることなのだろうか。
「考えるようにと言われたが、俺の考えは変わらない。何度も説得された時、条件を出した」
「条件?」
「林 今日子を異動させないことだ」
「……!!」
まさか、自分の移動が、後藤によって操られていたとは思いもしなかった。びっくりしすぎて声も出ない。
「その理由を話して、赴任の話は決着した。俺の交渉勝ちだ」
はははっ、と高らかに笑う後藤は、自分が何をしたのか分かっているのだろうか。人間一人の時間を左右したのだ。しかし、悪びれた感じは全くない。
「そんなことが……組織の中であり得ません」
「あり得ただろう? 異動がなかったんだから」
「じょ、常務は、あの、私たちのことは」
「会社で唯一知っている人物だな。帰国して真っ先に報告したよ。意中の女は仕留めましたってね」
「何も知らないわ」
「だって、今初めて話したことだ。知らなくて当然だ……ただ、退職をしないかだけが不安だった。異動は止められても、退職までは止められない。だから植草に報告させた」
ふざけた様子で話す後藤も、真剣な顔になった。
「イギリスにいても不安で仕方がなかった。もし退職の報告があったら、帰国して連れ帰ろうと思っていた」
「俊介さん」
「でも、君は変わらずここにいた……そして今がある」