俺と初めての恋愛をしよう
時の過ぎたかは人によってそれぞれだ。
一時間が長く感じる時もあれば、一か月があっという間に過ぎると、感じてしまう時もある。
今日子は後者の方で、とうとう退職の日が来てしまった。
 有休も消化して、業務の引き継ぎも終わり、退職の日となった。
引継ぎまではばたばたとしたが、それもなんとなく心地よかった。

「大丈夫でしょうか、僕……」

同じ班で、デスクを向かい合う中だった新入社員の子だ。
少し気が弱いところもあるが、丁寧に仕事を処理して、感心していた。
後藤を少し怖がっていて、ことあるごとに今日子に伺いをたてていた。

「部長は、出来ないことを出来ないままにする人が嫌いです。時間がかかってもちゃんと出来るようになる人は認める人です。仕事が出来る出来ないじゃなく、その過程を見てくれる人です。厳しい人ですが、あなたなら大丈夫」

不安がる彼に、今日子は励ます。前だったら、大丈夫しか言えなかっただろう。
彼は、無口な今日子にずっとついて仕事をしてきてくれた。今日子は感謝している。何も残せない先輩ではあったが、この励ましが彼にとっていいものになると思った。

 朝礼のない会社ではあったが、後藤が朝の就業前に部署の社員を集めた。

「皆も知っている通り、林さんが今日付で退職することになった。林、何か一言、挨拶を」

 後藤のデスクの前に社員が集まり、挨拶をする。

「一身上の都合で、本日限りで退職させていただくことになりました。8年間お世話になったこの部署ともお別れです。大変お世話になりました。ありがとうございました」

 深々と頭を下げ、お礼を言う。
 挨拶を終えると、部署の皆が拍手をして、お疲れ様でしたと言う言葉をかけている。
 部署の中でも、存在は薄かっただろう今日子も、流石に最後は寂しさがこみ上げた。

「今日一日、最後まで頼む。さあ、仕事にとりかかろう」

 
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