やさしい色
自然と言葉が出ていた。
食い込む指。
そっと手を重ねる。
「……知ってる」
ほとんどが呼気の、掠れた声。
ねじこむように絡む指先が燃えるように熱い。
……ここまでくればもう、嘘をついているとは思えなかった。
からかうなら、行き過ぎてる。
「それでも、離してくれないの?」
短い沈黙のあと、入栄は詰まったような声を絞り出した。
「……俺を、選んでくれるなら」
「だから、わたしは」
「他の男を好きでもいい」
「そんなこと……!」
人差し指が柊の唇に触れる。
「……不毛、なんでしょ」
「!」
「見たよ、昼休み。
―――吉崎さん、アイツの前で泣いてた」
―――見られていたのか……。
柊は全身の血が下がっていくのを感じた。
ミナへの後ろめたさで、たちまち足から力が抜けていく。
入栄に支えられていなければ危うかっただろう。
「彼女がいる男なんでしょ。知ってるよ。
……ストーカーだって嫌われたくないんだけど、ずっと見てたから俺は知ってる」
それほどわかりやすい態度だったのだろうか。
入栄にばれていたのなら、ミナには―――……。
柊の心配を読み取ったように、入栄は続けた。