やさしい色
*
和眞くんが最後にかけた言葉を改めて胸に刻んで、入栄はつとめて明るい声を放った。
「ごめん、待った?」
柱に身体を預けて、携帯で時刻を確認していた彼女が振り返り、にっこりとほほえんで首を振る。
「ううん。今日、部活休みなんだね」
「うん………あ、いや、7時から県の体育館であるんだけど。それまでは、休み」
行こうと促そうとして、ふいに彼女が訝しげに首を捻った。
「なにか、あった?」
ぎくりとした。
「……なに、が?」
そう返されるとは思わなかったのか、彼女はにわかに怯んだようになって、ううん、とかぶりを振った。
「何もないならいいの。勘違い。ごめん。行こう」
俺の部活のない日は彼女を送って帰るのが、最近できた暗黙の習慣。
カップルに一歩近づいたようなこの自然な距離間と、揃いの歩幅、そしてなにより、俺に遠回りをさせることについて罪悪感が彼女を窮屈にさせていない和やかな空気感。
はじめの頃といえば、律儀で謙虚な彼女のこと、予想以上に頑なに人に送られるということに抵抗を示し、哀しくなるほど「ここでいいから」と聞かされた。
送りたいんだよ、と言える喜びは大きい。受け入れてもらえるかどうかはともかくとして。
以前までの俺なら送ると言ってもきっと怪訝な顔をされただけだから。
……けれど。
本心を言えば、送って欲しい、と甘えてもらいたい。
ちゃんとした返事をもらえるまでは、多少浮かれても、それが答えだと早とちりしたりはしないから、せめて一度でいいから、おねがいされてみたい。
そうしてくれれば……。
どんなにか―――……。