やさしい色
(紛らわせられるのに)
……駄目だな、と自らに苦笑する。
どんどん欲張りになる。
何度も「ここでいい」と言われなくなっただけであの瞬間は満足だったのに、1つ満たされると、また1つ何かが欲しくなる。
さり気なく触れた手がくっと強張って、おずおずと握りかえされてから落ち着くまでの胸を焦がすもどかしさ。
初恋ってこんな感じだったかなぁ……と、なんだかもう、そわそわうずうずもやもやばかりの毎日で、しかし大抵が沈んで終わるやりきれなさは多分、かつてないもの。
彼女から感じるものはたしかにあるのに、それはあまりに儚くて、脆くて、すぐにも解けて消えそうな、日向にこぼれた雪片を思わせる。
―――笑顔で、俺なら大丈夫だって、待てるからって、心配は要らないって安心させてあげて
(どれほどの忍耐があれば……)
鼓膜に蘇る声。
大丈夫だとか、待てるとか、安心させてあげるとか……。
信じていれば、叶うのか。
だったら、あとどのくらい―――……。
触れていた熱がふいに途絶えて、入栄ははっと立ち竦んだ。
おどろいたように彼女もまた、俺の2歩先で足を止める。
入栄は自らの手に視線を落として愕然とした。
手を離したのが自分からであるという事実に唇がわななく。
振り返るその視線を直視できなかった。
口を開こうとしても舌が縺れて、思考は空回りを繰り返す。
気持ちが急いて、どんどん冷静から遠のいていく。
「―――やっぱり、なにかあった?」