美容師男子×美麗女子


「知ってるくせにな」

「まぁね」


千尋は物怖じしないで、あたしに向き合った。

ことん、と机からシャーペンが落ちた。


あたしは、その言葉を聞きたくはなかった。

だって、今の関係のままがすきだったんだ。

髪を触ってもらって、可愛くしてもらって、近付きすぎないで、遠すぎない距離。

それくらいが丁度よかったし、居心地が良かった。


だから、その居心地を壊すような“告白”とかは、いらない。


「あたしが好きだって言ったら、どうなるの?」


千尋はあんまり深く考えずに、「知らない」と言った。

綺麗な顔が笑った。

付き合うとか、そういうのはもういいんだ。

いらない。

そう言おうとした。


「千咲が俺のものになるだけじゃない?」


顔ひとつ変えずに、千尋はそう言った。


「あたしがあんたのものになるの?」

「じゃあ、俺が千咲のものになる?」


つい、笑ってしまった。

結局、適当なんだこの男は。


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