美容師男子×美麗女子






□ □ □



「ちょ、千咲まじで。いま1時」
「知ってるわよ。どうせ起きてるんでしょ?」
「起きてるけどさ、そろそろ寝ようと思ってたんだよ」


部屋に入れてくれた千尋はそう言ったけど、その割には髪型は夕方のまま、綺麗にセットしてあるし、服だって着替えていない。

千尋だって、たった今帰ってきたばかりの様子だった。

あたしもこのままの格好でよかった。
お互いに見せ付けてるみたいで、なんか滑稽だけど。


「…バイトしてたの」

「あぁ、最近な。あそこの美容院、叔父さんが経営してるんだ。簡単な作業手伝ってくれって言われて」

千尋のベッドに座り込む。

さっき染み付いた香水のにおいが、千尋にまで移りそうだ。
それも悪くない、とあたしは思う。

「それより千咲、よく俺があそこで働いてるって分かったな。まじでびびった」


千尋は何も気にしていないように、けろりと笑う。


「…アミのネイル」

「ネイル?」

千尋は顎に手をやり、考えるような素振りを見せた。


「アミってあの、一緒に来てた人?」

「とぼけないでよ、鮮明に覚えてるくせに」

「いやいやお前、俺が何人の顔見てると思ってんだよ」


千尋は笑った。
どうしてこいつはこんなに能天気なんだろうか。
あたしだけが気にしているみたいで、腹が立つ。


< 195 / 210 >

この作品をシェア

pagetop