美容師男子×美麗女子
「ネイルのデザインが、千尋っぽかったの。それに、若い人だって聞いたから、千尋じゃないかって思ったの」
千尋は目を見開いて、あたしの隣に座った。
「それだけ?」
「は?!なによ、それだけって」
「いや、デザインが俺っぽいって…」
千尋はまだ驚いているみたいだ。
「普通に嬉しい。気付いてくれるなんて、千咲くらいだ」
千尋は子供みたいに笑った。
美容系に話がいくと、いつも見せる顔。
本当に嬉しそうな、子供みたいな、無邪気な顔。
「っ、」
その顔、アミにも他の女にもたくさん見せてるんでしょう?
つい、その言葉が出そうになった。
「あ、アミがあんたのこと好きだって」
「え?まじでぇ?」
千尋はまた笑う。まんざらでもなさそうな。
思わず、そのセットされた髪の毛に手が伸びた。
「わっ、千咲やめろって」
柔らかくない、ワックスで固めてある髪の毛をぐしゃぐしゃといじると、千尋は笑いながらあたしの手を掴んだ。
「千尋、あたしのこと好きなんじゃないの?」
口が勝手に喋ってしまった。
案の定、千尋は目を見開いている。
言ってしまった。
この間、自分からこの話を遠ざけておいて。
あたしは顔が赤くなるでも、恥ずかしがるでもなく、ただ無表情で呆然としてしまった。
自分から言っておいて、何を言っているのか分からなかった。