美容師男子×美麗女子
掴まれたままの腕が熱い。
こうなったら引けない。あたしはじっと千尋を見つめた。
「さぁ?」
千尋はあたしの目を見つめ返して、意味深に笑う。
裏切られた気がした。
どん、と心が重くなる。
あたしは勝手に、千尋はあたしのことがずっと好きなんだって思ってた。自惚れてた。
そりゃそうだ、あたしは嘘つくし、可愛くないし、美容師なんてバイトやってたらアミみたいな可愛い子、たくさん言い寄ってくる。
「てかお前、なんでそんな怒ってんの?」
気付いたら俯いてて、千尋に覗き込まれた。
あたしがぐしゃぐしゃにした髪の毛がどうしても、いつもより可愛い。
いつもだったら、もっともっといじってやるのに。
今日はどうしてもそんな気になれない。
あたしは、千尋のただの“マネキン”みたいなものなのかもしれない。
「怒ってない」
掴まれたままの腕を振り払う。
びっくりしたように千尋は首を傾げた。
「嘘つくな」
まっすぐあたしを見てくる千尋が怖くて、思わずそこから立ち上がった。
あたし、おかしい。
なんでこんなに、焦ってんだ。
千尋相手なのに、なんでこんなに息切れしてんの。
千尋とは近すぎず遠すぎずの距離がいいって、自分で自負してたじゃないか。