美容師男子×美麗女子
「千咲!!」
あたしは何も言わずに、千尋の部屋を出た。
階段を下りて、裏口を開ける。
冷気が無防備な格好を襲う。
だけど、それも気にならなかった。
この感情は知っている。
春樹くんが、美咲を愛してるのを目の当たりにした時みたいな感情。
好きな人が、どうしても手に入らないときの、感情。
「…嫉妬」
このあたしが、千尋に。
しかも千尋は、ただ美容師のバイトとしてアミの髪を触っていただけだ。
だけど、だけど、だけど。
床に膝をついて、ネイルをする。
まるで跪いているみたいで、好きなその仕草。
アミにしてるところを見て、どうしても嫉妬してしまった。
あたし以外にそんなこと、しないでほしいって。
息を吐くと、白くなった。
あたしは無意味にパンプスを脱ぎ捨てて、手に持って、家まで走り出した。
無駄に露出されてるドレスで歩くのは、寒すぎる。
今は何も考えたくなくて、あたしは走った。