美容師男子×美麗女子
「怒ってないって、ほんとに」
「昨日は様子がおかしかったけど」
あたしの髪にその細い指を入れて、梳きはじめる。
油断しちゃ駄目だけど、どうしても落ち着いてしまう。
「昨日の千咲、可愛くなかった」
千尋を見ると、笑っている。
「がちで可愛くなかった。細いコテで巻いたって似合ってない。なんか、安い風俗嬢みたい」
「何でそんな上から目線なのよ」
「あー可愛くなかったー」
まだぼやき続ける千尋の髪を引っ張った。
痛い、とあたしを見ながらそう言う。
「だったらちひ、「俺が可愛くしたお前じゃないと、可愛くなんてない」
掴んでいた髪を離した。
どストレートに言ってきた、こいつ。
あたしの、あたしの中に入って来て欲しくなかった。
春樹くんも、美咲も、彰も千尋も入ってきて欲しくない、あたしだけの空間、あたしだけの輪の中に、誰も入ってきてほしくなかった。
あたしの日常を壊して欲しくないから。
その為だけに、嘘をついて、それに嘘を重ねて、彰の言う、「自分を守る嘘」をついてきた。
だけど、だけど。
もう、その嘘が突き通せなくなったかもしれない。
あたしは千尋の髪をつかむ。