美容師男子×美麗女子
「なんか、上の空」
「は」
あたしは顔を上げた。
今日はまた一段と眠そうな千尋の顔が、あたしを捉えていた。
「何聞いてもなんか抜けてるし、隙だらけっていうか、前はもっと鋭かった」
「なにそれ」
「ようするに、上の空ってこと」
べし、と千尋のデコピンがあたしに額に直撃した。
「・・・・それ、友達にも言われた」
「あ、そ」
ちょっと千尋を睨んで、今度はあたしが千尋の髪をひっぱってやった。
「・・・いたいって。あ、今日何曜日?」
千尋は思い出したように顔を上げる。
曜日?
「今日、店やってるわ」
「店?」
あたしが聞き返すと、千尋は「おう」とだけ呟いた。