青のキセキ

【大和side】

親睦会を終え、後片付けをする。


綾は、側で俺が後片付けするのを見ている。


社員じゃないからって、お客様じゃないんだから。後片付けぐらいしろよ。


夜のことを考えると、イライラが募る。



綾は今日こそは…とする気満々なのが否応なしに伝わる。


このまま、綾を抱いていいのか?


美空を想いながら綾を抱いていいのか?



やり場のない気持ちで心が震える。







そんなときだった。



「や~ま~と~くん。ちょっといいかな?」

振り向くと、翔が気色悪い笑みを浮かべながら俺の方へ歩いてきた。


やまとくん?何だ、そりゃ。

翔のことだ。絶対何か企んでやがる。


「何だよ。気持ち悪いな」


ろくなことはないと、眉をひそめて返事する。


翔がこっちに向かって歩いてきたので、綾は俺の側を離れた。


翔がすぐ近くまで寄ってきて言った。


「そんな顔するなよ。あのさ、今日、この後何か予定ある?」


「……いや、別に。綾とマンションへ帰るだけだ」


そう。綾を抱くために。



「ちょっと、付き合って欲しいんだけど」


「どこに?」


「一緒に飲みにでも行かないか?」


「は?今から?」


「おうよ。綾は家の方へ帰せばいいじゃん。駅まで送ってさ」


「お前、何考えてるんだ?」


「別に。話したいことがあるんだ」


話?翔が俺に?

何の話だよ。電話やメールじゃ駄目なのか?

そんな大切な話なのか?


そう思いながら、実の所、正直、心の底からホッとしていた。


翔の誘いのお陰で綾を抱かずに済む。そんな最低な思いが、直ぐ様頭に浮かんだ。


翔の誘いなら、綾も何も言えないだろう。



「分かった。綾には自宅に帰るように言うよ。翔、正直言って、助かった」

「何が?」


翔に事情を説明する。眉間に皺を寄せながら聞いていた翔は、俺の話を聞き終えると、深い溜め息を漏らした。


「お前も大変だな」

半ば呆れたように言う翔。









「お前、綾のこと愛してるのか?」
















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