青のキセキ
「俺たちが彼に会ったとき、きちんとした態度だったからびっくりしたよ。見た目はイケメンのお医者さんで、暴力を振るうような奴には見えなかったから。そいつの話だと、暴力を振るうのは、遥菜ちゃんを愛しすぎるからだと言ってた。遥菜ちゃんが電話に出ないと、他の男に会ってるんじゃないかとか、浮気してんじゃないかとか不安になるから、暴力で遥菜ちゃんを繋ぎとめようとしてたみたいだ」



「それだけ美空のことを愛してて、ましてや、自分の子供まで腹の中にいる相手にどうして暴力を振るえるんだよ!」



課長が怒鳴る。




「それは......」


翔さんが言葉に詰まった。



私を気遣ってくれてるのが分かる。






「彼、その頃、海外研修生の候補に挙がってて、問題を起こすわけにはいかないって。それに、赤ちゃんがいたら遥菜とセックスを思い切り楽しめないから邪魔だったから、堕ろせと言ったんです」


私や翔さんの代わりに、そう言ってくれたのは、久香だった。






「な...んだよ。それ」


課長が信じられないような顔をしてる。


「遥菜、彼に迫られた時に赤ちゃんを守ろうとして拒んだらしくて。それが、彼を怒らせたみたいで、殴られて蹴られて...。それが原因で赤ちゃんが...」


久香が話ながら泣いていた。

そんな久香を翔さんが優しく抱きしめていた。




私のために泣いてくれる久香。


私のために相談に乗ってくれ、力になってくれる翔さん。


そして、私を暖かく包み込んでくれる課長。








「久香、ごめんね。私のために泣いてくれて、ありがとね」



他に言葉が思い浮かばなくて、私はただただ久香に謝ることと、感謝を伝えることしかできなかった。






< 267 / 724 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop