孤独の戦いと限界
〜四日後〜
〜自宅〜

『友美、準備出来たか?』
『…うん』

この三日間、誰とも接することなく、一人で時間を過ごした。

俺は、自分の人生を呪いきれないほど呪った。。

喋る元気が無い程に、追い込まれた状態だったが、せめて見送る時だけ、虚勢でも空元気でも何でもいい。

『頑張ってきてくれ、無茶しない程度に…』

『…兄さんこそ大丈夫?』
『大丈夫、元気を取り戻したよ』

『最近、ロクにご飯を食べてないじゃない』

『食欲が出ないんだ。無理に食べて嘔吐する趣味もない』

『………』

『…ホントは行かないでほしい。でも、自分のワガママを通すわけには…』

『………』

『元気で…』

『………』

…‥


『………』

『‥うん、じゃあ行ってくるね』

『と…』

《パタッ》

『…友美』

これでいいんだ…、友美の選んだ道を応援するんだ…。
ひどくひどく悲しいが、これでいいんだ…、ろうか…。

…‥


〜公園〜

『………』

一人になりやる事の失った俺は、ベンチに座り現実を噛みしめいた。
世界がボヤけて見える。
本当に友美は上京し、遠くに行ったのだろうか…。

『友美、今頃電車の中かな‥』

まだ友美がいなくなった事を、実感仕切れていない。

『‥君』

失意のドン底に落とされた俺は、どうやって乗り越えればいいのだろうか…

『優助君!』

『やあ…、恵理』

『ボーっとしてるね、顔色も悪いよ。大丈夫?』

『…大丈夫』

『何かあったんですか?』
『何でもないよ』

『嘘!』

『えっ?』

『友美さんの事でしょ』

『……それは友美から聞いたのか?』

『うん、優助君には秘密にしてって』

『‥どうしてなんだ?』

『元気出そうよ。友美さんは新たな人生の道へ、夢を見出だしたんだから』

『そうだな…』

『………』

『………』

『…やっぱり淋しいの?』
『………』

『いつもの優助君に戻ってよ』

『………』

『………』

…‥


『吐き気がする…』

『…相当辛そうだね』

『…そうでもない』

『強がらなくてもいいから、少しずつ元気を取り戻して下さいね』

『………』

『…レスポンス少ないですよ』

それはそうだ、今はまさに悲しみの絶頂なのだから…。

『‥恵理』

『何ですか?』

『暫くの間、俺に構わないでほしい…』

『!、どういう意味?』

『親しい人、恋人は皆、俺の側から離れていく…』

『ちょっと待って。永遠の別れじゃないんだから。淋しいのは解るけど、心は繋がってるんだから』

『1人にしておいてくれ』

『…だ、大丈夫?』

無言でベンチを立ち、家路につく。
苦しい、何というツラさだ…。

『(いきなり友美さんがいなくなったのは、想像以上のショックを受けたみたいね…)』

…‥



〜自宅〜

夕飯は受けつかず、飲み物で済ます。
失恋ではないが、失望は強力なダイエット法かも。

《ブブブ…‥》

ん?、携帯…
すぐに画面をチェックする。

…友美。

話す気力も失せてきたが、とりあえず、今の友美の状況を知りたい。

《P》

『………』

『‥もしもし』

『‥看護学校には無事着いた?』

『あっ、うん。無事着いたよ』

『…そうか』

『うん、友達も優しい人が多いよ。素直にホッとしちゃった』

『…そうか』

『友達と言えば、佐藤君が荷物を持ってくれて凄く助かっちゃった♪』

『!!!!!!!!』

『意外に気配りな人で心の支えに…』

『!、……』

《P》

俺は携帯をソファーに投げつけた。

『ハァハァ…、聞くに耐えん会話だ』

もう男と仲良くなってるなんて…。

『苦しい…』

俺はリビングルームで、のたうちまわる。

何もかも上手くいかない自分がいて、一方で皆、それぞれの自分のやっている事を成功させている。

『一度失恋をしてしまい、新しい恋愛に心血を注ぐ俺は、やはり皆と違うんだ…』

失恋を経験して、俺は異常なまでに恋愛の価値を高めてしまったのか…。

しばらく携帯と、家の電話に友美から着信が入ったが、取る気はしなかった。

全てがうざったく感じ始めていた。

…‥

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