フェアリーテイル
「簡単なことでございます」
ネーネは言うと、目の前に広がるコンクリートの壁に、そっとカギを挿した。
刺さるはずのないコンクリートに、しかしあっさりとカギの先端は飲み込まれ、次いでまばゆい光が溢れた。
思わずミリアが目を閉じると、ネーネが小さくニャアと鳴いた。
「さぁ、ミリア様。参りましょう」
言われて目を開くと、そこにはいつの間にか質素な木の扉が現れていた。
ミリアが目を見開いていると、ネーネが焦れたようにもう一度ニャアと鳴いた。
「さぁ、急いで…」
急かされ、ミリアは渋々歩き出す。
ネーネが木の扉をカリカリと引っかくと、扉がひとりでに開いていく。
ミリアはひとまずは戸惑いを捨て、その扉をゆっくりとくぐった。