桜舞う頃に
木の裏に隠れたはいいが、この後何をすれば良いかも分からない。

淑子自身混乱していて冷静に考えられないのだ。

ただただ、目の前の男性がこの場から去ってくれたら・・・・・

そう思わずにはいられなかった。

が、すぐ傍にいる男性は去るつもりはないらしい。


淑子の体を見ないようにしながらも着ていた袿を脱ぐと、淑子に手渡す。

「とりあえず、それを着てください。

近くに我が別邸があります。そちらで着替えられたらどうですか?

そのままでは・・・・・お戻りできないでしょう。」

そういわれ、ますます困惑する淑子。

たしかにこのままでは戻れない。


が、だからといってよく知りもしない人のところにもいけるわけもない。

考えている間に刻々と時間は過ぎていく。

だが、いくら考えてもいい案は浮かばず、淑子は袿を羽織ったまま動けなかった。


そんな淑子に淳貴はじれったかったのだろう。


彼自身気づかなかったようだが、淑子の姿を少し垣間見た際、もっと近くで見たいと内心思っていたのだ。


あまりの美しさに。

だからだろう。

自分の屋敷に連れて行こうとしたのは。


淑子が困っているからというよりも自分がそうしたいからのほうが勝っていたのだが、今まで恋をしたことのない淳貴には分かっていなかった。

普通の淳貴なら決してやりそうもない行動なのだから・・・・・

何も返答を返さない淑子に苛立ち、淳貴は行動に移す。


このままだと彼女自身体を壊すことは明らかだった。


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