シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


どう考えても物理的に不可能だ。

スクリーンはひとつひとつが独立しているもので、例えスクリーンの向こう側に俺がみえねえ世界があったとしても、その扉が別個に存在している限りは、跨がって移動などできやしねえはずだ。


「こう考えて見ろ」


櫂が目頭を指で押さえながら言った。


「"異常"なのはスクリーン単体ではなく、そうしたおかしなことを創り出すこの風景全体。

式神で言えば、式神の数で力が決まるのではなく、術者である翠の潜在能力が問題になるのと同じこと。

つまり、目で見えるものは一番あてにはならない」


そして櫂は俺達を見渡して、にやりと笑ったんだ。


「何度も何度も…俺達は惑わされて懲りてきただろう? 目は指標にはなるが、それが本質を映しているモノではない」


まあ…確かに。

体ではなく心で感じ取ることで、ゲームを抜けてきた俺らだから言えることだろうけれど。


「紫堂櫂やワンコが判るもの、俺も判るように頑張る。だから、少しだけ俺に時間頂戴。5分もかけない。最低限のスタートライン、揃えたいんだ」


事態を見れば悠長なことはしてられねえけれど。

それでも櫂は小猿の為に時間を作ることを了承し、その間、俺と櫂は…大きな強い二重結界を張り、戦う忍者達の補佐につくことにした。


こちらの攻撃時間を遅らせるけれど、それは決して忍者達を見捨てたわけではねえ。

第一、犠牲を増やすことは櫂が望まない。

しかし、二重結界でも被害は大きいようだ。


敗因は――多分俺だ。

俺の力が、弱すぎる。



「煌……」


何か言いたげな漆黒の瞳に、俺は頷き……別の力を解放する。


「判ってるよ、俺は守護結界力は不得手だし、強くねえから。だから増幅の力…強めて、お前の結界力を強化する」


なんでそんなもんが俺にあるのかは判らねえが、使えるもんは使った方が良い。


当初それを使うだけで、ぜえぜはあはあしていた俺の体は、緋狭姉との鍛錬のおかげで、あの頃よりは随分マシになってきて、今では話ながらでもその力を使うことが出来る。


持久力はねえが、5分以内で小猿がケリをつけるのなら、その間分くらいは余裕で持たせることが出来る。


しかも櫂の力を増幅するという形は、俺にはやりやすいんだ。

やっぱ大好きな奴が相手だと、調和しやすいから。


「……よし」


櫂の声で、集中していた俺は、その力の固定化に意識を向けた。


5分お前達を守るから、頼むぞ、忍者達!!
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