シンデレラに玻璃の星冠をⅢ

真偽 煌Side

 煌Side
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第8の石碑にて、チビセリカとの別れの苦しみを切々とセリカに訴え続けるチビリスを引き剥がし、強制的に頭の上に乗せた俺。

へのへのもへじの顔には、どう見ても表情など浮かんでいるようには見えないものの、俯き加減なのはこいつなりにもチビリスとの別れを惜しんでいるのだろうか。


なんだかそれを思えば、押しに弱く曖昧な態度をとるセリカを一喝してやりたい心地になったけれど、所詮相手はへのへのもへじ。


現実の芹霞相手であれば、押しの一手で靡くのならば、がんがんいきたいものだけれど。


リスの恋路を邪魔するのは、人としてどうかと思い直し、ぼろぼろと泣き出す泣き虫チビリスのために、俺は大事な偃月刀をセリカに渡した。


「いいか、これをお守りに、敵が来たらこれで……」


ブンブンブン。


説明もまだだというのに、チビセリカは巨大な偃月刀を俺から奪うと、ぶんぶんと大きな音をたててその場で振り回し、迫り来るスクリーンをことごとく切り裂いていく。

もう俺達のことは眼中にないのか、背を向けて戦闘の渦中。


あの……俺の偃月刀なんですけど。


まったく気にもしてねえし、我が物顔で豪快な太刀捌き。


「おい、チビ。お前の惚れた相手は、ワイルドだな」

「ぐすっ……。僕もワイルドのりすだから相性ばっちし」

「ワイルドの使い方が間違っているような……。泣きながら、ドサクサ紛れて惚気(のろけ)るなよ。ほら、行くぞ。鉄の胡桃落とす役目はちゃんと果たせよ。終わったら、チビセリカに会えるんだから、急いで……」


「ぐだぐだ喋っている暇に早く動けよ、ちゃっちゃっと終わらせるんだから!! 僕はセリカと約束したんだ!!」


なんで俺がチビに怒られないといけねえんだろ。

なんだか理不尽に思いながらも、最後の石碑に向かって走る。


意思があるように纏わり付いてくる白いスクリーンを、捲り上げるようにして駆け抜け、緋狭姉との特訓で少しは鍛えられたはずの炎の力で、行く手を遮るものを燃やす。


「俺は偃月刀だけじゃねえんだよ」


……少し前までは、偃月刀以外は素手しかなかった俺の攻撃手段。

いつ、なにに幸いするかわからねえ。



目指すは最後。

本当に最後の石碑だ。


到着したら、チビがふんぞり返って奥義を炸裂する予定。


だけどなんだろう、妙に心が鬩ぐのは。
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