シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
睦月は夢路の前に、伸びているらしい緑皇の身体を放置すると、俺達のもとにやってくる。
「おやまあ、"策"とやらで仲間を守ろうと最上階に残った勇ましいリスの次は、綺麗な顔立ちのネコがお仲間かい。随分とおかしな模様を持つ、ふさふさなネコだけど」
"策"
"最上階に残った"
俺は直感する。
玲は、子供の存在に気づいたのだと。
その現実に、ひとりで立ち向かおうとしている。
そこに俺を必要としないのは寂しいけれど、それが玲の選んだ答えなら、俺はそんな玲が"策"として自らの心の整理をつけて前を向けるように、ここから祈るしかできない。
同時に――
俺はすべきことをしなければならない。
そうここの空間は、俺属性なのだから。
だから恐らく、緋狭さんは俺をここに連れてきたはずだから。
そう気持ち新たにしていれば、白いネコが睦月の迫り出した胸の上に飛び乗った。
最初の着地で揺れに揺れ、落ちそうになったことなど、なかったかのようにすました顔を睦月に向けて、口を開く。
「久しいな、睦月。また一段と育ったようだな、この目障りな胸は」
「……っ!? まさかその声、お前……貧乳の緋狭!? あそこからどうやって!?」
「まぁ色々とな」
美しいネコは得意げに笑う。
「……おい、櫂。緋狭姉って、昔は貧乳だったのか?」
「……。睦月からしてみればの話だろう?」
「ぼかしているってのは、昔から貧乳じゃ無かったってことか?」
「……も、黙秘」
「幼なじみの俺に、なんで黙秘よ!! 気になるじゃないか。貧乳の緋狭姉……」
「貧乳貧乳うるさいわっ!!」
怒れるネコの、派手な跳び蹴り一発。
顔面にそれを受けた煌は、真後ろにKO。
それでも黒装束の集中は途切れないようだ。
「し、知らないよ……、規律破ったこと知ったら、おばあちゃんがなんというか……」
「牛女。こけしはあっちからずっとこっち見てるぞ。多分ばればれだ」
むくりと頭を撫でながら起き上がった煌が、堂々と夢路を指をさす。
さっきから感じる夢路の視線は、俺や煌ではなく……緋狭さんに注がれていたのかもしれない。
注がれるというより、若干睨まれているという表現の方が近いような。
だがそれに動じる緋狭さんではない。
「相変わらず愛想もそっけもない女だな、昔から。女は愛嬌と言うだろうに。ほら、私だって愛想くらい出来るわ。ニャアアアアン」
ふさふさな手をくいっくいっと曲げる様は、まさに癒やし系の招きネコ。
それにつられるように、夢路がこちらに歩いてくる。
……緑皇など完全放置だ。