シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
虚数は、かなり高い高周波をあてることで爆発を起こす。
それにより"約束の地(カナン)"は爆破された。
だから虚数が満ちつつある裏世界での爆破を防ごうと、俺と玲は二手に分かれたんだ。
目では"輝くトラペソヘドロン"という、虚数を放つ黒い塔の壁を認識できていても、それでもそれ以上の異変を耳で感じ取れる煌も緋狭さんも、今の今まではなんともなかったはずで。
即ち今――
爆破可能なまでに虚数が満ち、高周波も発生しているというのか。
限りなく、爆破の可能性を高めて、それらは着々と爆破の準備を進めていたというのか。
「なんで……突然」
煌は唸るようにして言った。
そう、なんで突然なんだ?
虚数は玲が食い止めているはずだ。
玲ならば、進行を食い止めているはずだ。
外の亀裂が拡がっているのか。
あれが虚数を助長しているのか。
ならば――。
俺は、煌の視線の先を追う。
「……あいつら、なにしてるよ……」
今更ながらのその問いがなされずにいたのは、塔の防御を強めるためだという暗黙の認識があったからで。
それはこの世界を守ろうとしている心を信じていたからで。
「なぁこけし。なんであいつらの声に反応して、音がはっきりしてくるよ」
煌は耳から手を離して、夢路を睨む。
「これだったらまるで……」
そう、まるで――。
「あいつらが、この塔を爆破しようとしているみたいじゃねえか」
魔方陣を通した"妖蛆の秘密"の呪力で、玲でも追いつかぬほどの虚数を発生させ、なおかつ危険きわまりない、高周波を発生させていることにはならないか。
「こけしは聞こえねぇかもしれないけどよ、この硝子全体に……闇の鋭利な爪が、がりがりとひっかいているような嫌な音が、段々と音程を高めて……びりびりと、膨張しまくったここの瘴気をひっかいて穴を開けようとしているんだよ」
煌の耳から感じ取れる感覚。
「硝子の悲鳴が聞こえるんだよ」
煌は怒鳴る。
「塔を壊すつもりなら、この世界を壊すつもりなら!! 俺達が今までやってきた意味はなんだ!? 俺達を信じてなかったということか!?」