シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
悔しさに夢路を見れば、彼女は至って冷静に言った。
「ならば――。短期間に虚数の方が多く増やせるのなら、虚数を徹底的に増やすまで。
後は……」
夢路が俺達を見据えた後、にやりと笑う。
「後は、お前達が呼び寄せたあのリスの本体が、"反転"させるだろう。
虚数から……0と1へ、この塔、強いてはこの世界を守るために必要な、電脳世界の力に」
つまり虚数を増やすこの行為は、まるでオセロのように最後の一発逆転を賭けるもので。
大量の虚数が玲の力ともなる0と1の力に転じれば、確かに大きな力となる。
虚数に呼応する高周波は、一体なにに変じるのかはわからないが、これも諸刃の剣。
「お前達のように、妾達もお前達が信じるものを信じてみようと思う」
この危険な行動は――
俺達の……玲の力を信頼するがゆえのこと。
だとしたら、俺達はなにを惑う?
俺は煌を見た。
「はぁ……。疑い損だということだ」
苦笑して、煌は橙色の髪を手でかいた。
「妾達とて、危険な賭けに出ている。もしもリスの"反転"が不可能か、或いはそのタイミングを見定めることが出来ねば、この塔は虚数に汚染され……朽ちる。この世界諸共。朽ちる前に、爆発するか」
夢路の冷徹な眼差しが俺を見る。
「虚数を煽るは瘴気。瘴気を作るは……」
「闇」
俺は答える。
ああ、ならばもう――。
「膨れあがったこの瘴気を、玲のタイミングに合わせて調節する。それが俺の役目、ということだな?」
夢路は俺を見上げた。
「できるか? リスが虚数を反転するまで調節できるか? リスの動きを感じ取れるか? もしも失敗すれば、命に関わる……」
俺は超然と笑う。
「心配はいらない。俺はあいつの……血の繋がった従弟だからな。あいつはどんなことをしても、"0と1"に反転させる。だから俺はあいつの動きに合わせてみせる。必ず!!」
迷いなく、俺は玲を信じている。
玲は、必ず希望を未来に繋げると。
どんなことがあっても負けるような弱い男じゃない。
そうやって、どんな苦境をも乗り越え、強くなってきた男だから。
表世界から、リスになってまで駆けつけてきた男なんだから。
玲なら、必ず……虚数を0と1に反転することに気づき、それを成功させる。
その為に玲が最上階にて試練を受けているのだと、俺は思うんだ。
だから俺は、地下から玲を支える。
傍であいつを守れない分、信じることで俺は玲を支える。
それが今、俺ができること。