カプチーノ·カシス


「こんな所、入るの初めてだ……」


駅から一番近いという理由で決めたラブホの部屋を、まるで社会科見学か何かのように興味深そうに眺めている課長。

確かにラブホにしては凝った作りで、部屋の中にある小さならせん階段を上がるとバスルームに繋がっていて、その窓からは街が一望できた。


だけど……お風呂より景色より、先に楽しむべきことがあるでしょう?


あたしは彼を横目にコートを脱いでハンガーに掛けると、ベッドに飛び乗って課長に微笑みかける。


「そんな所に立ってないで、こっちに来て下さい」


課長は緊張した様子で上着を脱ぐと、ソファに放り投げてあたしの元までやってきた。

ネクタイを緩めながら、彼もベッドに腰掛ける。

弾んだスプリングの音に、あたしの心臓もどきんと跳ね上がった。


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