カプチーノ·カシス
動揺を悟られないように静かに蛇口を締めると、あたしは二人の方を振り返って微笑を浮かべた。
「じゃあ課長のために、今日は早く仕事終わらせないといけませんね。もう午後の生産が始まってるでしょうし、あたし工場にサンプル取りに行ってきます」
二人の反応を見ないうちに、あたしは開発室を逃げるように出て行く。
うかつだった……
夫婦なんだから当然、夫婦の営みというものを実行に移す夜だってあるだろう。
でも、あたしとの関係が始まった後では、彼はもう奥さんの身体を必要としないんじゃないかと、漠然と思っていた。
「そんなに、甘くないんだな……」
ため息とともにそう呟いて工場に入ろうとすると、ちょうどエアシャワーから出てきたハルとはち合わせた。