カプチーノ·カシス
「キリマンのサンプルか? ついでだから持ってきたぞ」
「あ! ありがと」
取りに行こうとしていた物をハルが持っていたので、あたしはそのまま彼と一緒に工場を出ると、彼の後ろを歩く。
「……あのさ、ハル」
「なんだよ、今夜の約束のキャンセルは受け付けないぞ」
「そうじゃなくて」
こんな浮かない気持ちの時はいつもハルに助けられてきたから、どうしても頼りたくなってしまう。
でも……あたしはハルに何を聞こうって言うんだろう。
話しかけたは良いけど次の言葉が浮かばないあたしを、振り返ったハルが怪訝そうに見つめる。
「……やっぱり、何でもない」
そう言ってうつむくあたしに、今度はハルが声を掛けた。
「今夜……美味いコーヒー、淹れてやる」