カプチーノ·カシス
まだ行くとは言ってないじゃん、とか。
コーヒー飲んだくらいで解決するなら苦労しない、とか。
可愛くない言葉が色々浮かんだけど、あたしはそれを飲み込んでハルに歩幅を合わせ、長身の彼を見上げる。
「……本当に美味しい?」
「あぁ。いいエスプレッソマシン買ったからな」
「じゃあ……行こう、かな」
「かな、じゃねえよ。拒否権はないって言ってんだろ」
こんなに強引でムカつく奴と話しているだけなのに、開発室を出たときより気持ちが浮上しているのは何故だろう。
ハル、アンタ、何者……?
アンタはあたしの心の主治医であるかのように、傷ついた部分をいつも的確に処置してくれる。
カルテがあるなら見せて欲しい。
だって、いつだってあたしよりずっとあたしの気持ちをわかってるんだもん……
どんどん先へ行ってしまうハルの背中に、あたしはそんなことを語りかけていた。