カプチーノ·カシス
その夜、あたしは約束通りの場所を訪れていた。
ここへ来るのは二度目だ。
そのやたら高級なマンションのエントランスに目を向けると、壁に寄りかかってあたしを待っていたのは、姿だけはいい男……ハル。
「早かったな」
「……ここに来るのに別に化粧を直す必要ないもん」
「今日がイブでもか?」
「あたしはコーヒーを飲みに来ただけ」
本当はそれだけじゃ済まないことぐらいわかってる。
それでも“あんたと寝るために来たわけじゃない”と主張するように、あたしは冷たい態度を取ってしまう。
「ねぇ、それ何?」
ふと、ハルが小さな紙袋を持っているのに気づく。
そこから少しだけ頭をのぞかせているのは、お酒の瓶のようだった。
「カシスリキュールだ。コーヒーもクリスマスらしくアレンジしようと思ってな」
「ふうん」