カプチーノ·カシス
手を伸ばして、抱きしめることができたらどんなに楽だろう……
でも、あたしにはそれができない。
そんなことをする権利はない。
「いい加減、諦めなよこんな女……」
あたしに言えるのはそんなことくらいしかなくて……
「……それができたら、苦労しねぇよ」
自嘲するようにハルは鼻で笑い、あたしに背を向けて豆を計量し始めた。
「あたし……お湯沸かすね」
「あぁ」
「ハルのカップ……どれだっけ」
「紺の無地」
そのそっけない返事に傷つく権利もないはずなのに、あたしの胸は棘が刺さったようにズキズキと痛い。
……勝手すぎるよ。
あんたが好きなのは課長でしょ?
どんなに自分にそう呼びかけても棘はより深く心に沈み込んで、あたしの心に大きな腫れを作った。