カプチーノ·カシス
「はい。本当はエスプレッソを使うんですけど、深煎りのコーヒーで代用しちゃいました」
「じゃあこれはもしかして、“グラニータ・ディ・カフェ”かな?」
課長がシャーベットを口に運びながら、あたしに尋ねる。
「さすが課長。もしかしてイタリアで本場のやつを食べたことあるんですか?」
「うん。向こうのはもっとクリームがどん、と乗っていたけどね。あれは確か新婚旅行の――……」
……新婚旅行。イタリア、だったんだ。
「……ごめん」
せっかく弾んでいた会話の熱は一気に冷めていき、シャーベットの苦みが口の中で一層際立つ。
だけどあたしは無理矢理作った笑顔でそれをごまかした。
「気にしないで下さい、あたしは大丈夫ですから」
「うん……でも」
課長は顎に手を当てて、何か考えているようだった。