カプチーノ·カシス

美波ちゃんに指定されたのは、都内にある大きな公園だった。


11時という約束の10分前には到着した僕だけど、待ち合わせ場所の桜並木にまだ美波ちゃんの姿はない。


桜の花は既に散って葉桜になっていたけど、地面には薄ピンクの絨毯ができていて僕の足元を春らしく彩る。


こういう場所でデートをするのは、相手が本当に好きな相手だったら楽しいんだろうな、と思う。


映画館や遊園地や動物園みたいに、積極的に“楽しさ”を提供してくれる場所と違って、ここは穏やかにゆったりと時間が流れている。


本物の恋人同士なら、そのゆるやかな時間を一緒に過ごすだけでこの上なく幸せな気持ちになれるんだろうけど……

今日の僕の相手は、“一方的に好意を寄せてくる困った後輩”……



「――――石原さん!待たせてごめんなさい!!」



僕はうつむいていた顔を上げて、その“困った後輩”の姿を目に入れた。


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