カプチーノ·カシス

僕の脳裏に、いつか美波ちゃんが言っていた言葉が蘇る―――…



『格好いいですよね、柏木さん。美波も最初好きになりそうでした』



もしも……もしも柏木さんに誘惑されたら。


美波ちゃんは、今度こそ彼を好きになってしまうのではないか。

僕なんて、あっさり捨ててしまうのではないか。


一気に押し寄せてきた不安で、胸が潰れそうになる。



「……やめて、ください」


「どうしてだ?ああ、じゃあこうしよう。木原をもらう代わりに愛海をお前にやる。
……それで文句はないだろう」



美波ちゃんの代わりに……愛海ちゃんを……?



確かに、僕は愛海ちゃんが大好きだった。

彼女に失恋したときは男のくせに女々しく涙まで流した。


……でもそれはもう、過去のこと。


“今”好きなのは、側にいたいのは、失いたくないのは……


美波ちゃん、ただ一人なんだ。


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