tender dragon Ⅰ
手をギュッと握り締めると、痛みがジワッと広がった。手が熱を持つのが分かる。
徐々に道が複雑になってきて、これなら逃げられるかもしれないと、可能性が出てきた。
あと少し…
あと少し頑張れ…
次の角を曲がったら……走る。
心臓がバクバク鳴って、飛び出てしまいそうだった。
もし捕まったらどうしよう、とか考えてたけど、そんなこと考えるより全力で走るんだ。
今あたしは1人なんだから、自分でどうにかするしかない。
息を整えて、足にグッと力を入れる。
角を曲がった瞬間、走り出した。
「待て!!」
案の条、後ろにいた男の人もあたしを追って走ってきた。
2人分の足音が静かな道にバタバタと響き渡る。ここにあたしとあの男の人しかいないことを表していた。
暗闇があたしの姿を隠してくれる。
複雑な道を曲がって、曲がって。少し離れた隙に、小さくなって木の影に隠れた。