tender dragon Ⅰ
「はぁっ……はぁ…っ」
乱れた息を必死に押さえる。
バタバタと走る足音は、すぐ近くから聞こえてきた。
「チッ………俺だけど。あぁ、見失った。まだ近くにいるから、探せ。見つけたら連絡しろ。」
さっきまであたしを追っていた男の人が、すぐ近くで電話をしていた。
相手はきっと仲間だろう。
この人の他にも、あたしを追ってる人がまだいるってこと。下手に動くわけにはいかない。
今見つかったら絶対に逃げ切れない。それはバカなあたしが考えたってすぐに分かった。
「くそ!!」
ガンッ!と音が響いて、思わず声が出そうになった。蹴り飛ばされたゴミ箱が、音を立てて地面に倒れる。
震える手をギュッと握りながら祈った。
お願いだから、気づかないで…!
そこにいた数分は、あたしからしてみたら何十分にも何時間にも感じられるくらい長い長い時間だった。
聞こえるんじゃないかと思うと息をするのも怖くて、走った後だったからすごく辛かった。
数分経って足音が遠ざかってから、そっと辺りを見渡すともうそこには誰もいなかった。