tender dragon Ⅰ
「帰らなくちゃ…」
見つからないうちに帰らなきゃ。
家がバレたらとんでもないことになる。きっと、家族に迷惑がかかるどころじゃ済まない。
誰もいないことをちゃんと確認して、いつもは通らない細い道をひたすら歩いた。
遠回りになるけど仕方ない。
大通りに出ると、きっと何人も待ち伏せしてるだろう。そんな危険な道1人で通れるわけない。
少し早足で。いや、駆け足だったかもしれない。とにかく急いで帰らなくちゃ、と思ってたから。
住んでるマンションが見えたとき、やっとホッとして涙が出た。
怖かった。
1人で暗い道を逃げなきゃならないなんて、女のあたしには怖すぎる。しかも相手は男の人だもん。
でもこれは自分で作った状況。
タケくんは何も悪くない。
財布を探してきていいよ、と言ったのはあたし。油断してしまったのもあたし。
正面からマンションに入ると、ふと外が気になって振り返った。