tender dragon Ⅰ
「…分かんない…」
そんなあたしを見て、葉太はため息をつく。
そしてあたしを見つめて
「俺、美波のこと好きなんだ」
信じられないことを言った。
「…え…?」
何を言ってるんだろう。
そんなはずない。
今まで一緒にいて、そんな素振り見せなかったもん。あのキスのことだって、酔ってたからだもん。
好かれる要素なんて1つもない。
「気づかれてんのかと思った」
「本気で言ってるの…?」
「…俺は好きじゃないやつにキスしたりしない」
「えっ…葉太覚えてるの…っ」
忘れてると思った。
酔ってたからなんだって。葉太がそんな人じゃないってことは分かってるけど、無理矢理納得して。
「…忘れるわけねぇじゃん。」
やめて。やめてよ。
覚えてるなんて、言わないで。
認めなくちゃならなくなるじゃない。
「美波だからキスしたんだ。」