tender dragon Ⅰ
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遠くでバイクの音が響く。
怖いと思っていたはずのその音に、なぜか安心してしまう。
……希龍くんとの電話を切って何分がたったんだろう。
まだそんなに時間はたってないはず。
暗い場所に1人、うずくまっていた。
ただ、蒼空くんが心配で。
きっと2人でいて見つかったとき、逃げ切れる自信がなかったから、自分がおとりになって…
あんな人数に、1人で。
勝てるはずなんてないのに、走っていった蒼空くんの後ろ姿に、迷いはなかった。
みんな必死にあたしを守ろうとしてくれてる。
春斗だってそうだった。
いつだってそう。
あたしを守ってくれた人は、必ず傷ついた。ボロボロになった。
どうしていつもこうなんだろう…
膝を抱え、壁に寄りかかったときだった。
―コツ、コツ…
静かな図書館に響く、足音。
少し急いだように歩くその足音は、だんだんとあたしに近づいてきてるようだった。