tender dragon Ⅰ
入ってすぐに、あたしは葉太に手を引っ張られた。葉太の後ろに隠される。
心臓がバクバク音を立てた。
蒼空くんは横たわっていて、ここから見ても分かるくらいに傷ついていた。
苦しい筈なのに、なぜか蒼空くんは笑ってるように見えた。
……やっぱり希龍くんの弟だね。
「うちの弟、返してもらおうか。」
シーンとした空間の中に希龍くんの低い声だけが響き渡る。
狂羅の人達は何も言わずに希龍くんだけをジッと睨んでいた。
希龍くんが「葉太。」と言うと、葉太は横たわる蒼空くんの元へと歩き出した。
コツ、コツと響く足音。
それ以外の音なんて聞こえなかった。
「中学生が無理してんじゃねぇよ。」
なんて言って、蒼空くんに肩を貸す。
狂羅の人たちが葉太を止めないのはきっと、目的が希龍くんにあるから。
希龍くんを潰すことしか考えてない。
だから、みんな希龍くんから目を離さない。ずっと睨み付けたままだった。
「うちの春斗やったのも、お前らだよな?」
強い口調。普段の希龍くんからは考えられないくらい、低い声だった。