tender dragon Ⅰ

「蒼空、だいぶ派手にやられたなー」

「ほんとだよ。」

目を瞑ってシートに寄りかかる。

綺麗な顔には所々傷があって、生々しく血が垂れていた。


「まぁ……あの自信がねぇバカ兄貴にはいい刺激になったんじゃねぇの?」

「ははっ、だな。」

安田さんも蒼空くんも笑ってた。

きっとこれは希龍くんの話。


窓からさっきいた場所を覗くと、ほんとにドラマでしか見たことのないような光景が広がる。

殴り合う人と人。

その中でもひときわ目立つのが、希龍くんと葉太だった。


狂羅の圧倒的不利。

素人のあたしでも、見てれば何となく分かった。龍泉が圧してる。


"狂犬"

その名の通り、葉太は希龍くんとは違って積極的に前に出る。向かってくる人を倒す姿は、まさに狂犬だった。


前に出る葉太とは正反対の希龍くん。

怪我は1つもない。

狂羅の人を倒しながら、全体を見てる。龍泉のトップに相応しい人間。

"金龍"は、希龍くんのものだ。

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