tender dragon Ⅰ
「美波、やってよ」
ベッドに座ってる希龍くんが、笑顔で言う。
この人には恥ずかしいっていう感情がない気がするんだけどな。
「…下手だけど、いい?」
「いいよ」
芽衣のように、希龍くんの顔をガッチリ掴む勇気はない。そんなの絶対無理。
綺麗な顔についた傷。
生々しいその傷は、希龍くんの顔にはとても不似合いで。違和感があった。
「何でそんなに離れてんの?」
希龍くんはベッドの端に座っていたあたしを、不思議そうな顔で見つめる。
「…ここからでも、消毒出来るから…」
「そこから?」
「……うん、ここから」
「手届かないでしょ。」
そう言って笑うと、あたしの手をグイッと引っ張った。その反動で、希龍くんが目の前にいる。
「わっ!!」
「ほら、ここなら届くでしょ?」
笑顔が眩しい。
目を合わせられないくらい、照れてる。
希龍くんは全く緊張してないのに、どうしてあたしばかりこんなに…