tender dragon Ⅰ
「いってぇな!ちょ、芽衣!!」
葉太の大きな声が部屋に響く。
葉太を捕まえる遼太くんと、楽しそうに笑う芽衣。こっちのことなんて全く見えてない。
「美波、消毒して?」
「あ…うん」
真っ正面から、こんなに近づいたのはいつぶりだっけ。
…あ、キスした日以来だっけ?
あのときもこんな風に近くに顔があって、同じように希龍くんは優しく笑ってて。
「緊張してるの?」
「え…何で?」
「唇、噛みすぎだよ」
唇に、希龍くんの手が触れる。
癖なのかもしれない。
緊張すると唇を噛んでしまう。
「噛んじゃダメだよ。」
あたしの唇をツツーッと滑る指の感触に、心臓がキューッとなって、頬に熱が集まった。
体の力が抜ける。
涙が出そうになるのは、嫌だからじゃない。
自分でも理由なんて分からないけど、息が乱れて希龍くんの顔を見れない。
この行動がこの人にとって無意識なものなのか、計算したものなのか。
……希龍くんのことだから、無意識か…