tender dragon Ⅰ


「よっしゃあ!!」

ガッツポーズをする遼太くんと、項垂れる芽衣。そしてそれを見て笑う希龍くん。

「…仕方ないなぁ」

じゃんけんをした結果、勝負は一度で決まった。あっけなく、芽衣が負けてしまった。

約束は約束だから、芽衣もしぶしぶ納得したみたいで、あたしに「おやすみ」なんて言って安田さんの部屋に入っていった。


「あれ?」


2人がいなくなってシーンとした空気の中に、あたしと希龍くんが2人だけ。

こんなこと、前もあった。

そりゃあそうだ。

だって、部屋は3つしかないんだから。


「俺、ソファで寝るよ」

こんな会話も、聞き覚えがある。

「えっ、ダメだよ!」

あのときと状況は同じだけど、希龍くんの状態は全く別。怪我してるんだから。

そんな人をソファで寝かせるなんてダメ。

……なんて、前も思ってた気がするなぁ。


「…だったら、一緒に寝る?」

ほら、一緒だ。

あのときの希龍くんの表情と、言葉が頭の中をグルグル回る。目の前の希龍くんと、一緒。


「…あたし、ソファで寝るよ」

そんな風に言うと、希龍くんが何て返してくるのかなんて簡単に予想できたのに。

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