風に恋して
第五章:嵐の襲来

不安

「レオ様、手が止まっております。そんなペースでは、ますますリア様のお部屋へ行く時間がなくなりますよ」

セストがため息混じりに言って、新しく書類の束を積み重ねた。それに、レオが顔をしかめる。

「なんだ、これは」
「4カ国会議関連の書類です」

ヴィエント王国、ルミエール王国、マーレ王国、フラメ王国――主要4カ国が毎年行うサミット。今年はフラメ王国での開催だ。

「欠席……は、無理だよな」
「無理です」

レオは頭を抱えた。なぜ、こうもタイミングが悪いのだろう。

「お前だけでも、城に……」
「無理です」

王であるレオはもちろん、レオの側近を務めているセストは政務の補佐でも重要な役割を担っている。彼を伴わずに4カ国会議に行くことはできない。

「お気持ちはわかりますが、こればかりは私もどうにもできません」

セストはレオがサインを終えた書類をテキパキと分類し、まとめながら言う。

「私たちの留守中はイヴァンとディノ、2人に対応させます。カタリナにもよく言っておきましょう。警護は……どういたしましょうか?」

セストの問いに、レオは手を止めた。
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