風に恋して
「一体、いつから……」

仕組まれていたのだろう。リアの話から、エンツォが復讐を決意したのが12年も前のことだとはわかったけれど。

それからずっと、憎しみを原動力に……彼はクラドールの最高峰といわれる王家専属まで上り詰め、さらに年月をかけて舞台を作り、役者を揃え、“呪文”と“薬”という道具を用意した。

「ねぇ、レオ。僕に言わせれば、リアに溺れてる君は王に向いてない。君は優しすぎるんだよ」

今までずっと笑顔を絶やさなかったユベール王子がスッと表情を消した。

「もっと損得を考えなよ。自分の利益のためには犠牲を払うのが当然。そうでしょ?」
「何が言いたい?」

レオがユベール王子を睨みつけると、彼の口角がわずかに上がる。

「リアをくれたら、エンツォをとめてあげる」

それを、レオが了承すると思っているのだろうか。それに……“とめてあげる。”ユベール王子のそれは、エンツォを殺してやると同義だ。

「バカを言うな」
「あんなに苦しめられておいて、まだ情けがあるの?」

ユベール王子はため息をついて立ち上がった。

「情けではない!人の命を軽く扱うなと言っている!」
「君のそういうところ、僕は嫌いだよ」

ユベール王子の声色が変わる。低く、誰もが震えるような凍りついた音。

「みんなで幸せに、って?現実はそんなに甘くない。君もそれは学んだと思ったんだけどな」
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