風に恋して
渦に巻き込まれるように、身体が宙に浮く。

だが……それは攻撃的なものではなく、すぐに床に足がついた。風が小さくなって、レオの周りを回って吹く。

『うー!』
「ル、カ……?」

ハッとして前を見ると、リアがレオの立っていた辺りでエンツォの風を受け止めていた。

「アソービメント」

小さくリアが呟くと、水のベールがエンツォの風に吸い込まれるようにして一緒になり渦を巻く。いや、吸い込まれているのは風の方だ。

そしてそれが弾け飛び、部屋に雨となって降り注いだ。部屋にいる者に降り注ぐそれは優しい温度だった。それがエンツォに伝わったのかは定かではないけれど。

「エンツォ」
「やぁ、リア。セストがこんなに早く記憶修正をマスターしたとは、ちょっと驚いたな」

エンツォは濡れた髪をかきあげながら言う。

「エンツォ……もう、終わりにしよう。こんなの、悲しいだけだよ」
「俺はやめないよ。母さんのために」

リアの声も後姿も震えている。憎しみに満ちた彼を見ているのがつらいのだろう。

「お母さんのために、その大切な命を捨てると言うの!?お母さんがくれた命を、そんな風に使って、お母さんのためになんてならないわ」

その言葉に、レオは一瞬息をすることを忘れた。
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