風に恋して
ソファにエンツォを寝かせると、オビディオが上着をかけてくれた。

そしてエンツォの髪をそっと撫でる。

「ごめんな……」

ポツリ、とオビディオが呟く。ヒメナの心臓がドキッと音を立てた。そしてオビディオの視線がゆっくりとヒメナに向けられた。

彼が謝る理由なんてヒメナには1つしか思い当たらない。

「俺の、子……なんだろう?」
「ち、違います!」

エンツォが眠っていることも忘れて叫んでいた。

それは口に出してはいけないこと。たとえ真実がそうであっても、だ。エンツォがオビディオの血を引いていると知られたら、カリストや父親が黙っていない。

今はまだ幼いエンツォには手を出していないだけだ。何もわからない彼が“それ”を話してしまうかもしれないと思っている。外面だけは気にする男なのだ。

マリナにもこんなことは言えない。確かにあの夜の出来事は彼女も望んだことかもしれない。でも、最終的に彼女を裏切ってしまったのは自分なのだ。それにオビディオとマリナの間にはレオが生まれた。そこに、エンツォの存在など入る余地はない。

「ヒメナ。俺もバカじゃない。カリストが愛人を多く抱えているのは知っている。そしておそらくお前も……っ」

オビディオは少しだけヒメナから視線を逸らす。しかしそれはすぐに戻ってきて。

「なぜ、2人目ができない?愛人に子供ができたという話も聞かない」
「そ、それは……」

口ごもってしまった。ヒメナの考えていたことをズバリと言い当てられたから。オビディオはゆっくりとヒメナの元へ近づき、その腕の中へ引き寄せた。
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