風に恋して
「まぁ……レオ様、エンツォ!それにリア様も」
「こんにちは。突然お邪魔してごめんなさい」

リアが丁寧に頭を下げると、ヒメナの母親は目を細めて微笑んだ。高齢のはずなのに、それを感じさせない容姿。テキパキとレオたちにお茶を出し、ヒメナを呼んでくるといって階段も軽く上って行った。

そしてすぐにヒメナが淡いグリーンのワンピースのスカートをはためかせながら階段を下りてくる。

「エンツォ!」

茶色の髪の毛を肩の辺りで揺らし、エンツォを見つけるととても嬉しそうに手を振ってくる。

「エンツォ!こんにちは。ずっと待っていたのに。私のことを忘れちゃったのかと思ったわ」
「やぁ。ごめんね。忘れていたわけじゃないんだ」

エンツォは少し困ったように笑ってヒメナの手を握った。自分たちの向かい側で再会を喜ぶ2人を、リアは穏やかな気持ちで見つめる。

2人のダークブルーの瞳と目元は本当にそっくりで、髪の色を黒く戻した今、エンツォは確かにオビディオの面影を映しているように思えた。

リアはチラッと隣に座るレオの様子を伺った。

興味なさそうに窓の外を見やってはいるが、リアと繋がれた手は先ほどからずっと強く握られている。
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