風に恋して
「……っ……んっ、はぁっ」

その時間はとても長く感じられた。

リアがようやくまともに呼吸ができるようになった頃、レオがリアの手を解放し、上半身を起こしくれた。

荒い呼吸を繰り返すリアを、ベッドから降りたレオが抱きかかえ、鏡台の前に連れて行く。鏡の前に立った瞬間、リアはガクガクと震え出した。

レオが後ろから抱き締めるように支えてくれていなければ、そのまま床に座り込んでしまっていただろう。

サッと血の気が引いていく。

自分の左胸――ちょうど心臓のある場所――に、王家の紋章が刻まれていたからだ。

「う、そ……」

リアが震える手で、それをなぞる。

ヴィエント王国では、王家の者が自分の伴侶――つまり正妃――を選ぶとき、相手の心臓に必ず紋章を刻む。それは、永遠の忠誠の証。もし、紋章を刻んだものが他の者と契れば……その紋章が心臓を焼き尽くす。

王家の正当な後継者にしか使うことのできない、血を守るために生み出された呪文だ。間違いが、起こらないように――
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