黒の森と、赤の……。/ ■恋愛シミュレーションゲーム□
「なぁ、転校生?
翔太がせっかく『ここに座れ』っつって誘ってくれてんのによぉ…」
そこでわざと、一旦区切る良雄。
しかしすぐにこちらを睨みつけ、低くドスの利いた声を吐き出す。
「 …なにシカトこいてんだてめえッ!! 」
…っ!!!
や……やばい…
…やばいこわいっ!
あ、足が、…震える…っ。
…突然の、修羅場を臭わせるその声に、バスの後ろ半分から、話し声は完全に消えた。
『あいつらだって、所詮は自分と同じ中学生なんだから』
そう考えていた自分の認識が、完全に甘かったことを思い知らされた。
……こいつら……常識から逸脱してる……。
戦慄する俺を尻目に、良雄は、依然こちらを睨むように見据えている。
足を組んだまま、背中を深くシートにあずけ威圧する様は、まるで、テレビとかで見たことのあるヤクザか、マンガとかで見た、 全校生徒を牛耳る不良高校生のようだ。
その姿を目にして、俺は完全に戦意を喪失していた。
『…できることなら、今すぐここから逃げ出したい…!』
頭の中で、そんな声が響く。
そんな中翔太は、今、自分が一番言われたくない言葉を、からかうように口にする。