黒の森と、赤の……。/ ■恋愛シミュレーションゲーム□
◆自分の身とプライドを守ることを両取りし、翔太の命令を聞いて、なんとかこの場だけでも切り抜けようと思った。


…それに現況では、その選択が一番安全だとも思えた。


俺は、良雄の機嫌がこれ以上悪化しないように、慌てて即答する。


「わ、わかったよ、
…言うとおりそこに座るから、落ち着いて…?
俺も竜崎たちに、話しがあるから…」


最低限のプライドを守るために、無駄に媚びを売るような真似はせず、努めて冷静にそう言った。

…いや、内心は震え上がっていたから、正確には “ 冷静に見せかけて ” …だけど。

さっき良雄が口にした、『翔太の “ 命令 ” 』という文句がかなり引っかかったけど、今はそんなこと言ってる場合じゃない。


その返事に満足したのか、即答したことが功を奏したのか、良雄の表情が緩んだ。

「へぇ?
意外と素直じゃねぇか転校生…。
なら早く、そこに座れや」

僅かに緩んだ表情ながらも、依然として威圧するような顔つきで、翔太の隣りの空いたシートを、乱暴に指差す。


翔太のほうを見れば、

「よっしゃ!
七夜くんげっとんー☆
さ♪ 早くコッチ来て、コッチ♪♪」

…と、なぜだかわからないが、変に浮かれている。


……その様子が不気味すぎて、嫌な予感しかしない……。


しかし自分で『座る』と宣言してしまった手前、それに良雄たちがそんな反応を示してしまったため……行動を起こさない訳にも、いかない…。


俺は正直、本当に逃げ出したい気持ちだったが、仕方なく、重い足取りで中央通路を最後部まで進んだ。
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